Food Security

「昆虫を食べる時代がやってくるらしい」

昆虫は、貴重なタンパク源である、と推薦する学者が、「だって、刺身だって、最初は変な感じだったでしょ」と、昆虫と刺身を同列に扱っていた。フランスのエスカルゴ、長野のイナゴ、確かに旨い、感じがする。要は料理方法の問題か。中国のゴキブリ養殖場から、大量のゴキブリが逃げたらしいが、漢方薬とはいえ、ゴキブリとなると、ハードルが高い。

「世界中で、蜂がバタバタ死んでいる」

アメリカでは、養蜂家が大騒ぎし、農薬のせいか、遺伝子組み換えのせいか、学者や化学メーカーを巻き込んで、議論紛糾している。蜂は、遠くに飛んでいっても、仲間と連絡し合い、やがて巣に戻るという、優れたセンサーを持っているが、これが破壊されたらしい。欧州では、原因と疑われる農薬の使用を禁止した。

「食い物の恨み」

昔、150年以上も前のこと、アイルランドの芋が疫病にかかって食糧難になったとき、イギリスは助けるどころか、アイルランドの少ない農産物を強制的に奪ってしまった。ために、百万人を超えるアイルランド人が飢えて死んだ。そのことを、約150年経て、当時のブレア首相は、アイルランド人に謝罪した。

「いざとなると、ジェントルマンも、奪ってしまう」

food security論議のいちばん深い問題はなにか。30年後の世界の人口は90億人になると、予想されていることである。9B population worldだ。食料だけの問題ではない。Water crisisも懸念されている。世界では、水資源地の買収が広がっている。日本でも、中国の資産家が「北海道の山を買った」とか、「山梨の水源を買った」とか、ニュースになっている。

「水も空気もただじゃない、殺生な話」

突然に90億人になるわけではない。たとえば、100万人都市を想像みるといい。新たに100万人都市が、100個できて、1億人分である。地球のラッシュアワー状態になる。食料が足りない、水が足りない、資源が足りない、そういう不足論ばかりじゃない。そこでは、ゴミ問題も大変だ。ゴミや下水処理が整備されないと、予期せぬdisease pandemicsの恐れがあると、指摘されている。伝染病は、グローバル時代には、あっという間に広がる。つまり、問題がlocal problemであっても、global problemに転換されるのである。

「やっぱり、牛はうまいでえ、なあ、肉はビーフがええで」

大阪の人は、豚や鶏より牛を好む。世界では、牛をたくさん食べる国、ブタをたくさん食べる国、鶏をたくさん食べる国、魚をたくさん食べる国、いろいろである。統計データをみると、世界の牛肉生産料は、年間およそ60百万トンで、米国人が2割食べている。1人当たりの消費量では、南米のウルグアイ人は年間60キロくらい食べている。ちなみに日本人は10キロである。

「豚だって、負けてはいない」

世界の豚肉生産量は、年間110百万トンで、そのうちの半分を中国人が食べている。一人当たりの消費量では、香港の人が年間70キロ食べている。日本人は20キロくらい。鶏肉は、78百万トンが生産され、米中で3割食べられており、一人当たりでは、UAEとクウェートが60キロくらい食べている。日本人は15キロ。

「うまいビーフには、ビールを飲ませる」

牛一頭はだいたい700キロの重量だが、年間の餌はおよそ6トンである。そのうち、半分くらいが、大豆やコーンなどの穀物だ。牛の餌も、豚の餌も、馬鹿にならない。日本ではビールまで飲ませている。「酔わせてどうする気なの」、と牛は質問しないが、いい霜降り肉ができるという。フランスの大統領が、その昔、鳥の目をつぶして、生きたままワイン漬けにした料理を食べたらしいが、人間は食にはうるさい。

世界には、犬やネコを食べる人たちがいる。韓国では、犬は貴重な食料であり、年間200万匹くらい食べられている。他方、犬はペットとして、世界中で飼われているが、売れ残りは殺されており、米国では3百万匹くらい、日本では家庭から捨てられた犬猫合計で18万から30万匹くらいが、年間に殺されているという。日本の金持ちの中には、犬にケーキや高級ビーフを食べさせる人もいて、一般庶民は、「あの犬になりたい」と思ったとか。

「いいかげんにせんと、いかんでえ」

隣の犬のソクラテスに聞いてみたら、牛と豚と鶏と犬と猫・・・が、アニマル世界のG20を開催したところ、「人間世界から逃げよう」ということで一致した、という話であった。食べたり、生ませたり、ペットにしたり、捨てたり、殺したり、高級食材を食べさせたり、人間という動物は、ほかの動物からみれば、訳の分からない、恐ろしい生き物なのだ、そうだ。

「今日は、いい餌が入っているよ、特売、特売」

統計数字をみれば、世界の大豆の年間生産量は、300百万トン、コーンの年間生産量は900百万トンである。90億人分としては、ぎりぎりだが、小麦の700百万トン、米の500百万トンなど、ほかの農作物をあわせれば、なんとかなるだろう。

「たまには、ビーフやソーセージも食べないなあ」

ビーフは記念日だけ、という時代がやってくる。タンパク源は「大豆を食べなさい」と言われる。「なにが困るのか」、と日本人は思うかもしれないが、大豆を「うまい、うまい」と食べているのは、日本人くらいである。大豆を、豆腐や納豆のようなすばらしい食材に転換している。もちろん、中国もできるが、日本の豆腐は天下一品である、と思っている。あとは南米はじめとする、まめ料理の国くらいである。

「コーンもうまい」

日本では、コーンは、焼いてよし、湯がいてよし、塩やバターに醤油で、香ばしいこと、うまいこと、と思う。コーンはアフリカや南米でも食べられるが、それほど、旨いと思っているのは、今のところは、日本人くらいだろうが、食べてみれば、世界中の人が「うまい、うまい」というに違いない。Food senseも変わっていく時代になってきた。